匿名組合を利用する場合は金融商品取引法の規制を受けますが、下記に該当する場合は規制対象外になります。
1、事業を行うときに、すべての投資家の同意を得ること(金商法施行令案第1条の3第2項第1号)
2、事業への貢献度合いが強いことで、下記のどちらかの条件に該当すること
・出資した全員が事業の運営に常時従事する(同項第2号イ)
・出資者が専門的な能力を持って、事業の運営を継続する上で欠くことができないものを発揮して従事する(同項第2号ロ)
この制度を利用してアプリ開発資金をクラウドファンディングで集めて匿名組合契約を出資者と結び、アプリから生じた利益(又は損失)を分配する仕組みを作ります。
つまり、アイディア投稿者も出資をしない限り当該アプリ開発には関われません。
アイティア投稿者もそれなりにリスクを負ってアプリ開発に取り組みます。
営業者であるSPCは出資金から一定率の営業者報酬を受け取ります。
(自らも参加するので、他のクラウドファンディングのような高額な手数料は取りません。)
(1)WEB上で案件ごとのコミニティページを作成し、出資者全員でアプリに関する意見交換を行う。
(2)決済手段は原則としてクレジット決済とする(応募する場合にクレジットカード決済させるが、目標金額に達しない場合は決済は行われない)。
(3)意見が割れたときや重要な意思決定を行う場合(例えば開発業者の選定など)は多数決を行うシステム実装
その他機能
・アプリ詳細情報を投稿するときの必要事項の記入で匿名組合契約書を自動作成しマイページ上で閲覧
投資型クラウドファンディングを運営したいのですが、当該スキームを利用する場合は集団投資スキームになるので金融商品取引法の縛りがあります。
ちょっとまとめてみました。
まず、集団投資スキームとは、金融商品取引法(以下法)2条2項5号において
①組合契約・匿名組合契約・投資事業有限責任組合契約・有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権、その他の権利のうち、
②出資者が出資または拠出した金銭を充てて行う事業から生じる収益の配当または財産の分配を受ける権利で、
③除外事由に該当しないものを、有価証券とみなす、としています。
有価証券でないものを有価証券とみなすことで有価証券と同等の規制を及ぼそうという趣旨ですね。
ただし、次のいずれかに該当する場合の権利は有価証券とはみなされません。
1.出資者全員が出資対象に関与する場合として政令で定める場合
(政令:全出資者の同意、全出資者が出資対象事業に常時従事等)
2.配当または分配が出資額を超えない契約
3.保険契約・制度共済契約・不動産特定共同事業契約
4.政令での補充条項 (法第2条2項5号より)
集団投資スキームにかかる規制
例えば、ある会社が投資家から出資を募る投資事業を行うため、匿名組合形式で出資者をつのる場合、匿名組合出資の持分はみなし有価証券(法2条2項5号)となり、有価証券の扱いとなります。
そして、その会社自身が出資者を募る場合、いわゆる自己募集(法第2条8項7号へ)に該当し、この勧誘行為は法28条2項に規定されている第2種金融商品取引業に該当し、この第2種金融商品取引業の登録が必要になってきます。
さらに、投資家から出資を受けた会社自身(匿名組合営業者)が投資家から集めた資金を主に有価証券(株式等)で運用する際には、投資運用業登録も当該会社による取得が必要になります。
但し、主に(50パーセントを超える場合)有価証券等による運用を行わないいわゆる事業型ファンド(投資家から集めた金銭等を株等の有価証券ではなく、事業にかかる物資等への投資を行う場合)であれば、その場合、投資運用業の登録は必要ではなくなります。
よって、原則として、匿名組合形式で、投資家に勧誘する段階においては「第2種金融商品取引業の登録」が必要となり、集めた金銭で主に有価証券等で運用するならば「投資運用業の登録」、が求められることになります(法2条8項15号ハ、29条)。
第2種金融商品取引業も、投資運用業もそれなりにハードルがありますので上記の規制から外れるためには、特例として、適格機関投資家等特例業務というものも存在します。
つまり、これまで「投資型」クラウドファンディングが増えなかった理由の大きなものの一つは、やはり株式の発行等に関する金融商品取引法の業規制です。
(1)株式型の場合は、第三者が新規発行株式の取得勧誘を行うときは、第一種金融商品取引業登録が必要
(2)匿名組合型の場合は、第三者が匿名組合契約持分(契約当事者の地位)の取得勧誘を行うときは、第二種金融商品取引業が必要
第一種金融商品取引業者は資本金5000万円、第二種金融商品取引業者は資本金1000万円、また各部門に知識と経験を有するものをそろえるなどの人的要件(もちろん第一種金融商品取引業の方がこの要件も高い水準となります。)などの参入要件が課されています。
これに加え、第一種金融商品取引業者(いわゆる証券会社。第一種金融商品取引業者であっても、有価証券関連デリバティブ取引等以外の店頭デリバティブ取引等のみを業として行う者は除かれます。)全社が加入することとされている日本証券業協会(以下「日証協」)規則では、構成員である証券会社が、「非上場株式」の募集等の取扱いを行うことが原則として禁止されています。
参入要件の緩和(金融商品取引法第 29 条の4の2、第 29 条の4の3関係)
有価証券の発行価額が少額の場合、すなわち、募集総額が1億円未満で、かつ一人当たり投資額 50 万円以下の場合、非上場有価証券等について電子募集取扱業務(インターネットを利用する方法による有価証券の募集の取扱い等)、つまりネットでの投資型クラウドファンディング(金商業者を介して、企業が発行する株式を購入する形式でのクラウドファンディング)をしたい業者の登録の基準を緩和します。
従前は、(上述した通り)投資型クラウドファンディングのうち、「株式型」(株式の購入を勧める場合)は、第1種金融商品取引業者として、兼業規制(金商業者になると出来ない事業がありました。)があり、しかも最低資本金は5,000万円、「ファンド型」(ファンド持分の購入を勧める場合)は、第2種金融商品取引業者として、兼業規制はないものの最低資本金として1,000万円が必要でした。
これが、上記の少額のみを取り扱う業者であれば、「株式型」であっても兼業規制等を課されなくなり、登録に必要な最低資本金基準が、第一種に関しては1,000万円、第2種に関しては500万円まで引き下げられます。
また、今回の改正に合わせて『「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」に係る説明資料』(金融庁のホームページhttp://www.fsa.go.jp/common/diet/index.html参照)によれば、日本証券業協会の自主規制で原則禁止とされています非上場株式の勧誘が、少額のクラウドファンディングに限って解禁されるようです。
つまり、有価証券とみなされなければ金融商品取引法の規制対象ではないということになります。
クラウドファンディングには、下記4つのタイプがあります。
① Equity-based(エクイティ型)
② Lending-based(貸付型)
③ Reward-based(物品購入型)
④ Donation-based(寄付型)
さらに、「投資型」クラウドファンディングとしては、
(1)仲介者を介して、事業者が発行する株式を購入する場合(以下「株式型」)と、
(2)投資家と事業者との間で匿名組合契約を締結し、出資を行う場合(以下「匿名組合型」)が存在します。
「投資型」クラウドファンディングはその性質から金融商品取引法の規制を受けることになりますので、参入要件の厳しさからあまり広まっていないのだと思います。
(政府は2014年3月14日の閣議で、保険業法と金融商品取引法の改正案を決定しました。)
しかし、この規制を逃れる条件もあります。
それが下記2つの要件を満たす場合です。
1、事業を行うときに、すべての投資家の同意を得ること(金商法施行令案第1条の3第2項第1号)
2、事業への貢献度合いが強いことで、下記のどちらかの条件に該当すること
・出資した全員が事業の運営に常時従事する(同項第2号イ)
・出資者が専門的な能力を持って、事業の運営を継続する上で欠くことができないものを発揮して従事する(同項第2号ロ)
つまり、インターネットを使ってクラウドファンディングで匿名組合委員を募集し、匿名組合員全員が事業の意思決定を行い、常時運営に従事すれば金融商品取引法の規制を受けないということになります。
ただし、集めた資金を有価証券で運用する場合はさらに投資運用業登録が必要になるので、事業型ファンド限定になりますが・・・。
次に自己募集を行う場合の金融商品取引法の規制ですが、営業者であるSPCが投資家に対しTK出資持分の自己募集を行う場合、SPCについて第二種金融商品取引業者としての登録が必要となる(金商法第2条第2項第5号、第2条第8項第7号ヘ、第28条第2項第1号、第29条)
まとめるとこんな感じ
・有価証券は金融商品取引法の規制を受ける(金商法第2条第2項)。
・匿名組合持ち分は有価証券とみなされる(第2条第2項第5号)。
・有価証券とみなされる権利の募集又は私募を行うには金融商品取引業の登録が必要(第2条第8項第7号ヘ)。
・第二種金融商品取引業者としての登録(第28条第2項第1号)。
つまり、上記2要件に該当するもの(第2条第8項第7号イ)は、有価証券とみなされないので自己募集を行ったとしても金融商品取引法の規制対象外ということになる。
この条件なら金融商品取引法に縛られることなくファンドが作れる・・・かもしれない。